メモリスパン

  • a
  • 2018/10/18 (Thu) 13:28:42
メモリスパンの実験の分析について質問です。
呈示時間の1要因分散分析で、有意差が見られたのに、呈示時間と方略の2要因分散分析では、呈示時間の主効果に有意差が見られなかったのですが、どうしてでしょうか。

Re: メモリスパン

  • 浅野
  • 2018/10/18 (Thu) 23:15:44
 どのレベルで回答を求めているのかが不明ですが,簡潔に述べれば,【前者は,対応のある分析であり,後者は対応がない分析であり,前者の方が検定力(真に差がある場合に,有意差が得られる確率)が高いから】となります。

 より詳細な説明は以下の通りです。なお,以下に示した説明は,(点線以下2-3行目などが)統計学的に間違った説明なのですが,まずはイメージをつかんでもらうことが重要なのではないかと思ったため,ご了承くださいませ。 

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★前提として,分散分析は,データの変動(例えば,メモリスパンの値がそれぞれ異なること)を「要因による変動(例えば,呈示時間の影響)」と「個人差による変動」と「その他の測定誤差による変動」とに区別して,「要因による変動」÷「個人差による変動+その他の測定誤差による変動」の解であるF値が,ある程度大きい場合に,「要因の(主)効果が有意である」といった検定結果を示す検定手法です。

★方略ごとで参加者を区分する前の分析は,呈示時間(300ms,1200ms)を要因とした,「対応がある1要因分散分析」を行っています。この場合,300msと1200msとの間で同一人物のメモリスパン値を比べていますので,メモリスパン値が異なる場合,それは「個人差による変動」ではなく,「要因による変動」と「その他の測定誤差による変動」だとみなされるわけです。そして,「要因による変動」÷「その他の測定誤差による変動」の解であるF値がある程度大きい場合に,「要因の(主)効果が有意である」といった検定結果を示すことになります。

★一方,方略を考慮した場合の分析では,呈示時間(300ms,1200ms)と方略(方略A,方略B)を要因としていますが,同じ人物でも300msと1200msで異なる方略を使用している場合が存在するため,例えば,方略Aにおける300ms条件と1200ms条件とで,同一人物を比較することができず,対応がある分析手法を用いることがきなくなっています。つまり,今回行った,呈示時間(300ms,1200ms)と方略(方略A,方略B)を要因とした分析は,対応がない2要因分散分析となるわけです。
 上記の事情で,対応がない分析手法を用いているため,呈示時間要因の主効果を検討する場合にも,300msと1200msとで同一人物の比較をするような計算手法は適用されなくなり,300msと1200msとの間でメモリスパン値が異なる場合,それは「要因による変動」と「個人差による変動」と「その他の測定誤差による変動」だとみなされてしまうわけです。
 そして,「要因による変動」÷「個人差による変動+その他の測定誤差による変動」の解であるF値がある程度大きい場合に,「要因の(主)効果が有意である」といった検定結果を示すことになります。

★上記の対応がある分析と対応がない分析を比べてみると,後者の方がF値を求める分母の数値が個人差による変動の分だけ大きくなってしまうために,検定力(真に差がある場合に,有意差が得られる確率)が低くなってしまうわけですね。
 300msと1200msとで同一の方略を用いるように指示をしていれば,呈示時間の要因は対応のある要因とみなして,対応がない方略要因との,2要因混合の分散分析が可能でした。そして,その場合,対応がある1要因分散分析の呈示時間の効果が有意か否かと,2要因混合の分散分析における呈示時間の主効果が有意か否かは基本的に一致すると考えられます。
 
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